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A. 第1案:仲裁条項
1. 仲裁による紛争解決
(1) 仲裁付託契約と仲裁条項
仲裁とは、当事者間の契約関係から生じた紛争を解決するため、仲裁契約(arbitration agreement)に基づいて選定された仲裁人により、指定された仲裁地において、特定の仲裁 規則にしたがって行われる仲裁手続である。係争当事者は、仲裁人によってなされた仲裁 判断を最終的・確定的なものとして、これに服従する。紛争を仲裁によって解決するため にも、またこれが訴訟に持ち込まれないようにするためにも、当事者間に仲裁契約があることを要する。これには、現在の紛争を仲裁によって解決するための仲裁付託契約(submission to arbitration)と、当事者間に締結された売買契約その他の契約関係に関連して将来発生するかもしれない紛争を仲裁によって解決することを約する仲裁条項(arbitration clause)がある。 際に紛争が起こり、和解しえぬ段階に到達した場合、それから仲裁に付託することは必ずしも容易でないので、契約を結ぶときに、できる限り仲裁条項を挿入しておくことが賢明である。
(2) 仲裁判断の効力と執行
仲裁手続は仲裁契約にもとづいて仲裁人が行う民事紛争の解決手段で、これを解決する ために仲裁人がなす決定を仲裁判断(arbitral awards)という。当事者が仲裁判断に服従 すべきであることは、仲裁契約からみても当然であり、また法律によって仲裁判断が確定 判決と同一の効力を有することが認められており(公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法 律(以下「公催仲裁法」という。)第800条)またその強制執行を求めることもできる(同第802条)。仲裁判断の履行方法は、当事者の道義的・自主的履行と法律による強制執行が あり、仲裁判断の殆とが当事者の自主的履行によって果たされているのが実態であるが、 万一履行を拒むときには、裁判所にその強制執行を求めることができる。しかし、このこ とは、一般にどの国においても、内国仲裁判断(domestic arbitral awards)について言い得ることであって、外国仲裁判断(foreign arbitral awards)の場合には、必ずしも当てはまらない。したがって、国際取引契約に仲裁条項を挿入する際に、外国仲裁判断の効力と執行の問題を考慮しなければならない。

 

 

 

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